当院では、主に内科の病気と歯の病気に対応しております。去勢・避妊はじめ、外科治療に関しては他院をご紹介しております。
うさぎの病気
食滞(毛球症)
うさぎは時に腸の動きが停滞して、糞塊や毛玉が胃腸に詰まってしまうことがあります。牧草などの食物繊維をしっかり食べていない場合や、換毛期に大量の抜け毛を飲み込んだ場合、不正咬合などで食事がしっかり取れていない場合、熱中症やなど、食滞になる原因は多岐に渡ります。
食滞になったうさぎは、停滞した胃腸の一部がガスや毛玉で拡張することで、腹痛などにより食欲や飲水量が低下してしまいます。飲水量の低下による脱水症状が起こると、胃腸の動きはますます低下して悪循環に陥ります。また、胃の出口がふさがっている場合、大量のガスが充満して胃拡張を起こすことがあり、大変危険です。
受診の目安
食欲がなくなり、便が出ない、という症状が出たら、なるべく早めの受診が必要です。大抵は飲水量の低下し、脱水を起こしています。尿量が低下し、腎不全に陥っていることも珍しくありません。たとえ、元気食欲が多少あっても、糞の形の不整、大小不同、排便量の低下があれば、受診したほうが無難です。
当院では、排便量の低下などから食滞を疑った場合、胃拡張や不正咬合の有無などを確認して、基本的には皮下補液による治療を頻繁に行います。胃拡張がある場合は、鎮静〜軽い全身麻酔にて、胃内にカテーテルを挿入してガスを抜きます。メトクロプラミド、メロキシカム、ブプレノルフィンといったお薬を使い、胃腸を動かし、鎮痛を緩和して、食欲が回復するのを待ちます。
予後
9割程度の症例は、皮下補液による治療に反応しています。翌日〜3日程度かけて徐々に便の量が増え、食欲が改善していきます。残念ながら治療に反応せず死亡してしまう例、手術による毛球の除去を必要とする例があります。
不正咬合
うさぎの歯は、生涯を通して常に伸び続けます。通常、毎日の食事を食べる際に何度も咀嚼することで、歯が適切な長さと角度に維持されます。伸びすぎた歯が咀嚼によって十分に摩耗しないと、歯が伸びすぎたり、曲がって伸びたりしてしまい、頬の内側や舌を刺激して潰瘍をつくったり、フードを咀嚼できなくなったりしてしまいます。
受診の目安
不正咬合の状態にあるうさぎは、徐々に食欲が低下し、流涎や歯ぎしりが目立つようになります。そのような症状がある場合は、はやめの受診がお勧めです。当院では、まず無麻酔下で口腔の観察を行い、歯の状態をチェックします。より詳しく調べる必要があるときは、レントゲン撮影を行ったり、全身麻酔下での口腔精査をすることもあります。
治療
不正咬合の治療では、主に全身麻酔下での歯の切削を行っています。より正常な咬合面に調整するため、電動ドリルによる細かい切削を行います。無麻酔での処置もある程度可能ですが、棘状に削れてとがっている歯の一部を大まかに切断するような応急処置として行います。
一度治療を行うことで、正常な摩耗がある程度可能になると、しばらく治療の必要はありません。ただし、一度不正咬合を起こした歯は、多くの場合、正常よりも曲がった方向に伸びるため、頻繁に治療しなければならないこともあります。治療後は食欲や体重、便の量などをチェックし、異常を感じたら早めの定期検診をお勧めします。
不正咬合の予防
- 牧草を与える
十分な牧草を咀嚼することで、歯が適切に摩耗するので、牧草をしっかり食べさせてください。ペレットフードは栄養価が高いので、牧草の摂食量低下につながることがあります。大人のうさぎのペレット給餌量は、1日当たり体重の1.5~2%が適量と言われています。例えば、1000gの体重では、1000×1.5~2%=15~20gを1日に与え、それ以外は牧草を与えるようにします。
- 穀物の多給を避ける
穀物のあげすぎは不正咬合の原因になると考えられています。トウモロコシ、麦などの穀物は、カルシウムに対するリンの含有量が多く、食べ過ぎるとカルシウムとリンのバランスを崩して、骨の強度の低下をきたすと考えられています。歯を支えている顎の骨に十分な強度がないと、咀嚼の際の強い力によって歯根の位置が変わるため、歯の伸長方向が変化します。
コクシジウム症
腸の中の寄生虫による感染症です。特に体の小さい、幼い子ウサギでは、生活環境の変化によるストレスにより発症することが多く認められます。
感染していても健康であるように見えることがありますが、栄養不良によって痩せてることが多いです。感染が進行すると、泥状〜水様の下痢が始まり、食欲がなくなります。脱水と低栄養によって体力を奪われ、ついには命を落としてしまいます。
水様下痢などが発症してから危篤状態になるまでが非常に早いので、コクシジウムの感染を疑った場合は、すぐに検便または試験的に内服を始める必要があります。食欲がなかったり、おしっこをしていない場合は皮下点滴が必要になります。
腸の損傷がひどくなる前に治療を開始できれば、多くは回復します。症状がなくても痩せている子ウサギは、はやめに動物病院で相談しましょう。
ジアルジア症
腸の中の寄生虫による感染症です。コクシジウムほど多くはありませんが、体の小さい、幼い子ウサギでは、生活環境の変化によるストレスにより発症することが多く認められます。
感染していても表面上は症状がないこともありますが、大概は栄養不良によって痩せています。ジアルジア原虫が腸の粘膜の表面に張り付いて、栄養吸収を阻害するためです。進行すると粘液状の便を含んだ下痢をすることがあります。コクシジウムと同様、子ウサギで重度の下痢が続く場合、致死的になることが多いです。
検便によって虫体を検出することで診断できますが、見つからないことも多く、試験的に内服薬を投与することもあります。大人のうさぎでは子ウサギほど多くない感染症ですが、慢性的な下痢をしている場合は、試験的に治療して改善する場合があります。
栄養障害がひどくなる前であれば、多くは回復します。
エンセファリトゾーン症
脳組織に寄生する原虫により引き起こされる脳炎により、眼振や斜頸を特徴とした神経症状を起こす病気です。発症すると首をかしげたような格好のまま、頭の位置を正常に保つことができなります。うさぎは激しいめまいから姿勢を保つことが困難になり、歩行や食事ができなくなってしまいます。重症の場合は体勢の崩れからそのまま横にグルグル回転してしまう、ローリングという症状を起こします。
診断のためには抗体検査が利用できますが、確実な検査ではありません。多くはその特徴的な症状から仮診断し、治療を開始します。フェンベンダゾール、アルベンダゾールといった駆虫薬を使用します。軽症例では数日の内服で回復することもありますが、重症例では 回復までに1ヶ月以上かかることもあります。脳炎が重度の場合は神経症状が強く出るため、駆虫薬と同時にステロイドによる治療を併用します。
脳炎症状を適切にコントロールできれば、首を傾げていながらも食欲旺盛なケースが多いのですが、自分で摂食することが難しいので、食事の補助が大変重要です。水を飲めないことも多いので、生野菜で水分補給したり、スポイトで飲ませたりします。それでも尿量が十分でない場合は皮下点滴で水分を補います。また、ローリング等により際限なくグルグルを回り続けるような場合は、鎮静剤を投与したり、斜頸した頭部を支えてローリングを防ぐためにドーナツ型のカラーを装着したりすることがあります。
うさぎ梅毒
スピロヘータの一種(トレポネーマ菌)にて引き起こされる感染症です。鼻・口の周り・陰部の周辺など粘膜に近いところで強い炎炎を起こします。移動のストレス等により体調を崩すと、発症することが多い様です。特定の抗菌剤にしか反応しないため、適切な治療が遅れてしまうことがあります。
いったん治ってからの再発も多く、外見上の治癒以降もしばらく治療を続ける必要があります。
治療方法は大きく分けて2つあり、教科書的にはペニシリンを用いた治療が一般的に記載されています。ただ、その方法は副作用が強く、時に致死的になるとされているので、国内では代わりに安全な抗菌剤を用いた方法が第一に選択される傾向にあります。ペニシリンよりも再発率が高いと言われますが、正確なところは報告がありません。
メリット・デメリットを合わせて考えながら治療を考えていく必要がありますが、総じて治療の成功率は高いと思われます。
潰瘍性足底皮膚炎(ソアホック)
生活環境中で床が固すぎる、足の裏(かかとの部分)に潰瘍を起こしてしまうことがあります。もともと野生のウサギは柔らかい土の上で生活するため、自然界では起こらない病気ですが、ペットとして買われているウサギは、フローリングや金属製のすのこ(プラスチック製でも)などの硬い床ですごす時間が長いと、次第にかかとの脱毛が始まることがあります。最初は脱毛だけですが、そのまま気づかないでいると、皮膚に潰瘍ができてしまい、じっとしていることが多くなったり、食欲がなくなったりしてしまいます。
足の裏を自宅でも観察できる場合は、ときどきチェックすると良いでしょう。かかとの裏の毛が薄くなって、赤い皮膚が見えていたら注意が必要です。足の裏を見せてくれない場合は動物病院でチェックしてもらいましょう。スノコ(プラスチック製、木製ともに)だけのときは、固すぎることが多いので、ふかふかの絨毯、褥瘡マット、牧草などを、うさぎの生活圏全体に敷き詰めると良いでしょう(特に一番多く過ごす場所を重点的に!)。
一度剥げてしまうと、なかなか元のようにフサフサにはなりませんが、生活環境の改善により、多くはそのまま悪化せずに過ごすことができるようです。
ツメダニ症
体の表面に寄生するダニの一種です。一見、フケのように見えますが、顕微鏡で見るとダニであることがわかります。かゆみが出ることもあり、ストレスにより食滞に陥ることもあるようなので注意が必要です。
皮膚に垂らすだけのお薬で治療可能です。2−4週おきに2−3回投与します。
マラセチア外耳炎
真菌(カビ)の一種である「マラセチア菌」による耳道内の炎症。犬の外耳炎の原因として一般的ですが、時折うさぎでも見られます。本来は常在菌の一種を考えられ、通常はあまり増殖しすぎず、問題を起こさないと思われますが、マラセチア菌に対するアレルギー反応を起こす体質、湿度の上昇や暑熱環境(垂れ耳によるムレなど)が要因となり、激しい痒みを伴う外耳道の炎症を起こします。かゆみの場所は耳の中ですが、耳の周辺を掻くため、首の部分や背中に描き壊しを生じることがあります。
上の写真のうさぎは耳の周りを掻くため、耳根部(耳の付け根)に脱毛と鱗屑(フケ)が見られます。
耳垢を採取し、顕微鏡で観察(テープストリップ法;ディフクイック染色)すると、角質の表面に多くのマラセチア菌(黒い粒)が検出されます。胞子の構造とひょうたん型の特徴的な形状から暫定的に診断して治療に進みます。
うさぎの食事
うさぎは食事管理が健康を保つ基本になります。好き嫌いや食べ過ぎを避けて、不溶性食物繊維(牧草)をしっかりと食べさせましょう。甘いものの食べ過ぎは偏食を招きます。牧草を食べて欲しいのに好き嫌いしてしまう。そうならないように普段から粗食にしっかりと慣れさせる必要があります。 |
生後4ヶ月まで:体重の5%
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